2002/07/02 (火) 18:54
最近は、なるべく、患者を入院させずに管理するように心掛けてきました。
今はアトピーは一人だけです。
30才の独身女性で、5年ほど前に離脱済ませ、しばらく来なかったのですが、アトピーは落ち着いたが、その後急性前骨髄性白血病発症し、化療受けていたとのこと。
寛解し、やれやれと思ったら、ちょうどリバウンドそっくりの皮疹の増悪をきたしました。
化療メニューにステロイドは入っていません。
希死念慮強く、家族が毛布にくるんで運んで来たので、入院受けないわけにはいかない。
拒食で、IVH管理してます。
退職決めた後だったので、これが私の最後の「全身管理」になるのだろうな、と思いながら鎖骨下カテ入れました。
それで、彼女が言うんですよ。
ステロイドだの、脱ステロイドだの、そんなことはどうでもいい。もう、何もわからない。
なぜ、私は生きてるの?もし白血病が再発したら、また化療するの?そうしたら、またこんな目に合うの?
私の居場所がない。私はどこに居ればいいの?
先生、お願いだから行かないで。先生が行ってしまったら、私どうしたらいいのかわからない。
彼女に、生きるということの意味を教えなければならない。
すくなくとも、生き続けることの素晴らしさを知っているかのように装わなければならない。
大丈夫、生きていれば、必ず治るよ。
死んじゃえば、治るものも治らないよ。
あなたは、何もしなくてもいい。
だから、ごはんだけ食べてね。一口でも二口でも、食べられるだけでいいから。
そう、言いながら、ボロボロの皮膚に覆われて、痩せこけた肩をなでる。
もう、長い付き合いじゃない。初診から数えて何年だっけ。
昔から可愛かったよ。元々美人なんだから、必ずまた綺麗になるってば。
大丈夫。
先生、本当に大丈夫?本当に、治る?
私みたいな人って他にいる?こんなぼろぼろの皮膚の人他にもいる?
大丈夫、生きていれば治るよ。
あなたが、生きていれば、治る。
死んじゃったら、治らないよ。
そう言いながら、窓の外の遠くの景色を眺めて、自分自身、生きている意味がわからなくなってるのに、この作業はつらいな、とぼんやりと、思う。
そんな、日々。
深谷元継
国立名古屋病院皮膚科
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